vol.08 横浜市立みなと赤十字病院看護部長 間瀬 照美
救急から地域まで、すべてを「つなぐ」看護を目指して

横浜市立みなと赤十字病院の特徴を教えてください。

当院は設置主体が横浜市、経営が赤十字という公設民営では初めての病院です。
全国からスタッフが集まり、様々な機能が求められていくうちに、チーム医療という独自の文化が根付いていきました。
また、赤十字病院として災害救援が特徴です。

看護をする上で一番大切に考えていることは何ですか?

まずは、プロフェッショナルである事。
そして、患者の病苦に寄り添えることが大切だと思います。
また、患者さんが一番望む方法をご自身で決められるような環境を作り「意思決定を支援」することが大事だと考えています。

私自身、師長になりたてで必死だった頃、ある40代の男性が肺がんで何度も入退院を繰り返していました。
何度も話しているうちに、「自分の亡くなり方を遺書として託したい」とおっしゃられて、亡くなった後に着たい洋服や帽子、胸元においてほしいCDなどを預かりました。
元々ミュージシャンだったこともあり、かっこよく終えたいと思ったのでしょうね。「最期はこの姿で帰りましょう」と約束したことが心に残っています。

現在、看護部として取り組んでいることはありますか?

最近の取り組みでは、乳がんの患者さんが多い事もあり、今年度は横浜市の支援を受けて“ブレストセンター”が立ち上がりました。
がん診療に限らず、当院では“スペシャリスト”の連携がよく、患者さんにとって必要なことがあれば、各分野のスペシャリストにつなげることが強みとなっています。

また、働きやすい職場には“仕組み”と“看護”が必要です。
その“仕組み”を整えていけるのは管理者だと思っています。

そこで昨年、他の保育園に預けている方でも、夜勤の間は当院の保育所に預ける事ができるようにしました。もし預けたお子さんが体調を崩した時は、職場を抜けて小児救急外来に受診できるようにしました。朝までは入院できる仕組みとし、ママさん達が安心して働ける環境を作りまた。その他、病棟の師長と働きやすい勤務を相談し一人ひとりに合わせた勤務の工夫をしました。
また、キャリアを活かして学生の指導や委員会の担当などの役割で活躍していただいています。

“看護”では、専門職としてやりがいを持つことが大切だと思います。
当院では一年間同じチームに所属して、患者さんを入院から退院まで受け持つ「固定チーム継続受け持ち制」を行っています。
自分の受け持ちの患者さんに責任をもって看護計画を立てるのですが、それをチームで24時間対応できるように毎日カンファレンスをしていきます。1年目も2年目も関係なく同じように看護をしてサービスを提供できるように、皆で協力して補ってはいるものの、大変で苦労も多いと思います。
しかし、一生懸命勤務している中で、少しでも患者さんにとって良いことがあった時に『やってよかった』という達成感が出てきます。最終的に自信を持って『いい看護ができる!』と感じてもらえれば、離職率の低下につながると考えています。

今後、病院を良くしていく為にお考えのことはありますか?

来年度に取り組んでいこうと考えていることの一つに「アドバンスケアプランニング」があります。
終末期を含めた今後の医療や介護について話し合い、意思決定が出来なくなったときに備えて、本人が生き方の方針を決めておくことをいいます。昨今、地方では盛んになっていますが、都会ではなかなか浸透しいくいのが現状です。まずは院内からスタッフ一人一人に知識をつけてもらい、近い将来、地域の先生方や訪問看護師さんなどと一緒になって、人々が望む暮らしや生き方に応じられるようにサポートしていきたいと思っています。

最後に学生さんにメッセージをお願いします。

生きている中で一番苦しいとき、寄り添って支援していく事ができる職種が医療者であり、患者さんが一番本音を吐き出してくれるのは看護師であること、それが一番の魅力です。学生さんには常にあきらめない、チャレンジする気持ちを持って欲しいです。
基礎学力があるに越したことはありませんが、仮に苦手だったとしても、自分の苦しみから逃げない心を持って欲しいと思います。患者さんは逃げずに戦っていますので。

私たちの病院は、看護部として“つなぐ”というコンセプトをとても大切にしています。
当院は救急車で来院される方が多いのですが、入院されて地域に戻るまでにいろんな方々とつながっていきます。
患者さんの「意思決定」を支えながら倫理観を持って様々な方をつないでいく、そんな『看護をしたい!』という方に是非、当院に来て頂きたいと思っています。