vol.07 藍野花園病院 看護部長×副看護部長対談
積極的にチャレンジを!患者さんの気持ちを汲み取ることのできる看護師を育てたい。 看護部長(右):福井学 副看護部長(左):五十里 淳
藍野花園病院の特徴を教えてください。
患者さんは数週間から数ヶ月ほど入院されることが多くて、一般病床と比べると、患者さんやご家族とじっくり関わりながら、生活全般をサポートするような看護をさせていただいています。
お二人が恒昭会、また精神科に勤められたきっかけは?
看護副部長:僕も日本海側方面の出身で、准看護学校の先生から紹介されて入職しました。当時、すでに同じ病棟に福井看護部長がいたのでかわいがっていただきました。あれからもう20年経ちます…。
看護部長:外科では患者さんの回復経過が早くて、良くなっていかれる姿を見られるのがやりがいでした。ただ、せっかく受け持ちになっても、数回担当すると退院していかれるので、「関わり」という点では物足りなさも感じていました。
精神科に移り、自分の希望をうまく伝えることの出来ない患者さんが多い中、ゆっくりと話をしながら少しずつ、言葉にならない思いを理解して、患者さんの希望やニーズを医療に反映させていく過程は「自分にしかできない」というやりがいを感じます。
看護副部長:実は僕、救急に憧れを持っていました。ですが精神科に縁がありこちらに勤めるようになり…そうですね、僕も携われば携わるほど奥深さ、やりがいを感じるようになりました。 それこそ噛めば噛むほど味がでるイメージです(笑)
看護部長:自分が年を重ねていくのも大きいかもね。 結婚して子どもができ、親が年をとると、患者さんやご家族の置かれている状況が身にしみて感じられるようになりました。若手の頃は気づかなかった患者さんの気持ちであるとか。
看護副部長:それはありますね。「こんな気持ちだったのかな」と今になって分かるとか。
五十里さんは精神看護認定看護師でもあります。
1つの言葉で理解してもらえるようにするには、脳の機能を踏まえて考えるといいんだなと。 認定資格を取るまでの1年は週1、2日が仕事で週2、3日が研修というハードな状況でしたが、病院のスタッフや家族に支えてもらえました。
精神科のスペシャリストとして自信が持てる看護師さんがどんどん増えていけばいいですね。
看護部長:看護部長になって約半年になりますが、研修の在り方を見直しoff-JTからOJTへのシフトを進めています。
認定看護師が現場に足を運んで、患者さんの看護や多職種との協働で悩んでいる看護師の相談・指導をしてもらっています。
研修会も充実させていますが、「研修ばかりで現場に看護師が足りない」という本末転倒な状況は好ましくないですし、看護の知識は患者さんへのケアに活かされてこそ意味があると考えています。「実践につなげる」ということが大きなテーマですね。
今後も認定看護師を増やしていき、それを現場の看護の質向上につなげていきたいと思っていますし、そのためには勤務のシフトを配慮し、研修費を病院で負担するなど、スタッフがチャレンジしやすい環境作りを心掛けています。
看護副部長:僕も仕事扱いで研修に行かせてもらえるので助かりました!
キャリアアップへのサポートが充実されているんですね!新人教育の面ではいかがですか?
看護副部長:国が進めている地域包括ケアをふまえ、患者さんが地域の中で暮らすことを前提とした視点で看護を展開する力を、入職後3年で学び取ってもらえるような教育内容にしています。
例えば、オレム=アンダーウッドのセルフケア理論を学びながら、卒後2年目には就労支援や住居サービスの場へ見学にいき、どの程度の生活が成り立てればいいのかを知っておくことで、退院後を見据えた看護が具体的になります。
精神科全体が在宅看護と深くつながっていますし、時代の流れにもなっているので流れを読みつつベストな看護を提供したいです。
また、合併症を積極的に受け入れているので、清潔操作や輸液管理などのシミュレーション研修やOJTによる看護技術指導体制の充実にも力を入れています。
今後の目標を教えてください。また、メッセージをお願いします!
看護副部長:スタッフ全員が精神科の看護に自信をもってほしいです! 一緒に成長していきたいですし、成長はやりがいにもつながると思います。 また看護の前段階で相手の立場に立ち、患者さんの感情に気づける看護師を育成することは大切だと考えています。 これはどこの診療科にいっても役に立つのではないでしょうか。
看護部長:精神疾患の患者数は推計320万人とも言われています。2013年からは5大疾病として医療計画に精神疾患が加わりました。 超高齢化社会を迎え、認知症患者数も増加するなか、医療は、「病気を治す」だけでなく、患者さんの心にも寄り添い、「その人らしく生きていくお手伝い」も担っていかなければならない。そういった意味で、これからは精神科の時代なんじゃないかなと思っています。
看護副部長:年代・職種問わず、風通しのいい職場なのが最大の魅力かなと思っています。 先日の台風の際は、帰宅困難なスタッフを、師長や主任が自家用車で自宅まで送り届けていました。 今思えば風通しの良さは昔から変わっていないですね。若い頃ほど意見が言いやすかったですしいろんな提案もしていました。意見を吸収してくれる懐の大きい方が上司や先輩に多くいたなと思います。 僕も若手の頃、思った事をすぐに口に出していましたし(笑)
看護部長:そうだね(笑)
看護副部長:はい(笑)跳ね返されたとしても怒られたわけではなく、次も気づいたら言ってみよう聞いてもらおうと思える風土がずっと続いているんじゃないかなと思います。 ベテランとなった今でもよく話を聞いていただいていますし、研修に参加した際、ディスカッションする時などにこのスキルが大いに役立っています。そういった意味でもこの病院で働かせてもらって本当によかったです。
看護部長:恒昭会では「ユトリスト」いうテーマでワークライフバランスの向上に取り組んでいます。 公休は127日でしっかりとれますし、年休消化率は昨年度実績86%です。 残業に関しても平均して1人月10時間以下ですので、仕事以外のこともしっかり充実させることができます。また子育てママさんが働きやすいように、時短勤務や非常勤、夜間帯の保育なども導入しています。
しかし、本当の意味でのワークライフバランスは、そのような休みの多さや、子育て支援などの「制度」だけではあまり意味がないと思っています。例えば、多様な働き方の促進は、「それを穴埋めするスタッフへの負担が増す」という側面もあります。お互いがサポートしあえる職場風土や管理者のマネジメントがあって、初めていろいろな人が働きやすい環境が生まれると思います。
その点、この病院には、体調不良やお子さんの病気などで出勤できなくなったら「代わりに出るから休みや」と言ってくれるスタッフがいっぱいいることが誇りです。 挨拶だけで終わってしまう関係でも仕事は回りますが、それに加えて「子どもさん大丈夫やった?」「地震があったけど実家は大丈夫?」など、相手を思いやるスタッフ同士のつながりが、「ユトリスト」の根幹であると考えています。
看護副部長:新しく一緒に働く新人看護師さんも、誰かに何かをしてあげることで喜びを感じられる人が良いですね。そういうスタッフを増やしていくことで、看護の質もチームワークもよくなってくると思います!
看護部長:素直であること、そして何事にも挑戦してみる積極性は大切です。挑戦してみるといろいろなことが開けて成長につながりますから。来春、看護師として臨床の門を叩かれるみなさん、ぜひ看護の質向上のために力を貸してください!