vol.02 佐藤病院看護部長 木下 明美
看護の中心に患者さんがいる。いつも心に「尊敬」の気持ちがありました。

がん性疼痛認定看護師になられたきっかけは?

取得当時、外科病棟の配属でした。がん患者さんの「動けない」「痛い」といった症状をたくさん見ていました。あちこちに転移している患者さんも多くいらっしゃったんです。
自分の知識不足を痛感しましたね。 先生と患者さんの痛みに関してカンファレンスをしたいのに、話すことも知識不足で出来なかった…。
私自身「どうすればいいのか」が分からなかったのです。「ごめんね。何もできなくて」と強烈に感じました。患者さんに対して申し訳ないと思ったことがきっかけですね。知識と力を付けないと何もできないんです。また自分が苦しんでいたときに、スタッフも同じように悩んでいました。患者さんにもスタッフにも申し訳ない、それで、自分が知識と技術をつけて力になれることがあるんじゃないかと思い認定看護師を取得しました。

「がん」の方々と近くで向き合い続けるのはつらくはないですか?

そうですね…。
つらいなという感情は感じないわけではないです。ですがそう感じてしまうと「自分が主人公」になってしまう気がして。
辛いなって思っても「ちがうやん」「一番は患者さんやん」と感情の切り替えをしています。
辛いという感情よりは思ったようにケアができず、患者さんの意思を受け入れられなかった時に「申し訳ない」と感じますね。
逆に 痛みがある人がちょっとよくなっていたり笑顔でいたりすると心から「よかった」と思えます。

今まで出会ってきた患者さんを思い出すことはありますか?

印象に残っている患者さんはたくさんいらっしゃいます。
もう十何年前になるんですががんで、結局は良くならなかった患者さんがいるんです。当時は「あの時の看護は果たして良かったのだろうか」と考えていた時期もありました。
でも何年もたった今でもご家族さんが会いに来てくれるんです。
「今の私はあの患者さんに恥じないような看護が出来ているのかな」と今でも思わせてくれる存在です。

大阪のがん診療拠点病院としての取り組みは?

拠点病院として「緩和ケア」ということに対しての周知活動に力を入れています。
現在、医師、各部署の看護師、薬剤師などが「がんサポートチーム」を組んでいます。
また緩和ケアの専門医に美杉会・系列病院の男山病院から1週間に1回きてもらいラウンドへ出て患者さんの容態を観察したりしています。

院内のスタッフに緩和ケアや、ケアそのものを知ってもらうため「広報誌」も職員向けに発行、毎回テーマを決め、緩和ケアがどんなものかということから、サポートチームでの活動内容、患者様との向き合い方などを載せています。
小さい病院ですが世の中の流れをキャッチし、取り入れていくところが大きな特徴です。
「今すぐ」がこの病院のモットーなんですよ!
すべての物事に対して「今すぐしよう」という雰囲気なので、何事に対しても対応する力はあります。 患者さんへの対応もスピーディーで、病院の一番のメリットかなと思いますね。

木下さんにとっての「看護」とはどういったものでしょう?

難しい…(笑)
壮大なテーマですね(笑)
でも看護師として患者さんの背景、気持ちの辛さ、死に対しての思い、「患者さんの生きている」ことに向きあえる人間にならないといけないと感じます。
振り返ってみると「ほっとけない」「気になる」という自分の持つ根本的な気持ちが原動力として大きかったですね。
患者さんを思う気持ちがあっても、知識や技術が未熟では伝わりません。
思いと知識、技術があってこそ患者さんのケアに繋がります。 だから看護師である限り、ずっと勉強しないといけないと思っています。

あと大切なのは患者さんを「尊敬」する気持ちです。
患者さんは人生の先輩だと思って接しています。
たとえ自分より若かったとしてもその病気を「経験されている先輩」であり「病気と戦っている人」として尊敬しています。
人生の先輩として患者さんのお話の中から学ぶことも多いです。
「患者さんといるから看護師として、人として成長している」と思います。 そうですね…。私にとっての看護は「患者さんとの中で成長する事」なんだと思います。
看護は従事しているうちに魅力を感じてもらえる仕事です。
やりがいを見つけられるまでの時間はしんどいことの方が多いかもしれないですね。
私も器用なタイプではないので「次に生かそう!」「次はこうしよう!」とひとつずつ積み重ねてきました。
沢山の経験を通して患者さんに何かしてあげられるか?何をしなければならないのか?と考えられるようになったら看護が面白くなってきます。