准看護師にできない事、できること

一般的に「看護師」と呼ばれているのは“正看護師”の免許を持っている人のことです。
看護師には“准看護師”という職業もあり、2つには細かな点で違いが見られます。

そこで今回は、看護師と准看護師の違いについて解説します。

看護師と准看護師の定義の違い

看護師と准看護師は、一見すると何も違いがないように思えます。
しかし「保健師助産師看護師法」には看護師と准看護師の定義が書かれており、それぞれの違いが明確になっています。[注1]
以下が看護師と准看護師の定義です。

看護師の定義 この法律において「看護師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。
准看護師の定義 この法律において「准看護師」とは、都道府県知事の免許を受けて、医師、歯科医師又は看護師の指示を受けて、前条に規定することを行うことを業とする者をいう。

ポイントとなるのは2つで、まず免許の出どころが異なります。
看護師は厚生労働大臣から免許を受けますが、准看護師は都道府県知事の免許を受けます。

もう1つの違いは、療養上の世話又は診療の補助に対する定められ方です。
准看護師は、それらの行為を患者に行う際、医師・歯科医師・看護師の指示を受けなければなりません。

以上が看護師と准看護師の違いです。

[注1]保健師助産師看護師法

准看護師ができること・できないこと

准看護師ができること・できないこと

看護師と准看護師の定義に違いがあることはわかりました。
では業務において、看護師と准看護師の業務に差はあるのでしょうか。

業務内容・範囲は看護師と変わらない

結論から述べると、看護師と准看護師の業務範囲はほぼ変わりません。
したがって、看護師が毎日行う以下の業務は、准看護師でも行えます。

  • 血圧、脈拍、体温の測定
  • 点滴の作成、投与
  • 採血、点滴路の確保
  • 食事介助
  • 排泄介助
  • 入浴介助
  • シーツ交換
  • 配薬、セット
  • 手術、処置の補助
  • 体位変換
  • 夜勤巡回、夜間患者対応
  • カンファレンス参加
  • 患者さんの送迎
  • カルテ入力業務

そのため、准看護師も看護師と同様の知識や技術を身に付ける必要があります。

自分で判断して看護業務を行うことはできない

准看護師の業務内容は看護師と変わりませんが、自身で判断して看護業務を遂行することはできません。
保健師助産師看護師法の定義にもあるように、准看護師が業務を行えるのは医師・歯科医師・看護医の指示を受けてからです。

例えば、患者さんから入浴介助や清拭介助を頼まれたとします。
看護師は、そのまま介助の準備をして業務に移れますが、准看護師はその日の受け持ち看護師もしくはリーダー看護師にその旨を伝え、指示を仰ぐ必要があるのです。

もちろん、他の業務に関してもすべて看護師の指示を受けてからなので、結果として業務のスピードや効率は看護師よりも劣る傾向にあります。

他の看護師への指示も不可

准看護師は、看護師に指示を出すことはできません。
たとえ年齢の離れた後輩であってもそれは同じです。

なぜなら、保健師助産師看護師法にもあるように、看護師は准看護師に指示を出す側だからです。

ただ、准看護師が指示を出した方が良いと考えられるケースもあります。
それは新人の看護師が受け持っている患者さんの緊急対応に立ち合った場合です。

このケースでは、准看護師の方が知識も経験も上であるため、他の看護師が来るまでは准看護師の指示に新人看護師が従うという流れが妥当です。
しかし法律で定められている以上、それに背くことは許されません。

こうしたケースで悩みを抱える准看護師は少なくないのです。

管理職への昇進もできない

准看護師は、看護師のように管理職への昇進もできないと考えられています。
そのため、准看護師として働き続ける以上は、現場が主な仕事場となるのです。

ただ年齢を重ねていくと、現場の仕事が辛くなる准看護師も少なくありません。

看護計画の立案はできない

准看護師が、看護業務の中でできないことは「看護計画の立案」です。
看護計画とは、患者さんの入院から退院までどのように過ごすのか、退院までどのような目標を掲げるかを明確にしたもので、患者さん一人ひとりに立てられています。

そのため看護師は、看護学校や大学に通う段階で、看護計画立案のイロハを学びます。
しかし、准看護師養成学校の授業内容には看護計画立案の教育やアセスメント能力に関する教育が含まれていません。

こうした理由により、准看護師は看護計画の立案はできないのです。

准看護師は看護師と細かい点で異なる

上述したように、准看護師の業務内容は看護師とほぼ変わりません。
しかし法律によって違いが明記されているため、准看護師は看護師と同じような道を歩むことはできません。

これから准看護師を目指す人は、この記事で違いをしっかり理解しておきましょう。