とても重要な患者さんに行う最後のケア。エンゼルケアの実施項目と手順

前回はエンゼルケアの目的と流れに関してお話させて頂きました。
今回はエンゼルケアの実際の実施内容と手順をお話させて頂きます。

エンゼルメイクの実施内容と順番

エンゼルメイクの実施内容の順番は

• 排泄物処理
• 口腔、眼内ケア
• 脱衣
• 全身清拭
• 手浴、足浴
• 爪切り
• シャンプー、整髪
• 着衣

です。

口腔ケア・眼内ケア

基本的に死後硬直というのは顎から始まります。
そのため口腔ケア・眼内ケアなどを先に行うのですがもう一つ理由があります。
ご家族の方は亡くなった人から出てくる匂いで更に亡くなったことを実感し、心を痛めます。
そうならないためにもできるだけ早く口腔ヘアや眼内ケアを行う必要があるのです。
もしご家族がその場にいない場合は、到着するまでに眼内ケアまでをすべて実施しておく方がいい場合もあります。

脱衣

ご家族が同席、もしくは到着してから脱衣を開始します。
その際は基本的に仰向けの状態での脱衣を心がけ、横向けに動かす回数はできるだけ最小限にしましょう。仰向けにすると体液漏れや便漏れなどが生じる場合もあります。

全身清拭

清拭に関してもご家族と共に実施頂きますが、陰部や乳房などの清拭の際はタオル等の布をかけ見えないようにしてから清拭しましょう。
また清拭の際は表面が傷つかない程度に抑え拭きで行い終わったら必ず保湿してください。

手浴、足浴・シャンプー・爪切り

手浴、足浴はお湯をためた洗面器に手足を入れて洗うのですが、その際はご家族の方と一緒に洗ってあげるのもいいでしょう。
そうすることにより看取りを通してご本人と触れて頂けます。
爪切りやシャンプーなどもできるのであれば一緒に行ってください。

整髪

その後の整髪に関しては生前のご本人の姿をご家族と一緒に確認しながら行いましょう。
もちろん整髪料や白髪染めもご希望があればできるだけご希望に添えるよう行ってください。

着衣

最後に着衣する際も脱衣と同じように仰向けのまま行ってください。
また腹部が締まるものに関しては避けて、できるだけゆったりと着られるものにしましょう。
（腐敗等による液漏れのリスクが高まるため）
着衣の際もご家族の方と協力して行ってください。

冷却

そしてこの着衣と同時に胃、腸、肺の部分を中心に保冷剤などをつかい冷却していきます。

身体の中のタンパク質が大腸菌や腸球菌などに分解されることで腐敗し、臭気が発生します。細菌類は30～40℃で活発になりますのでそうならないようこのタイミングで冷却を開始しましょう。

エンゼルメイク

ここまでの実施項目が終わったら最後に顔のエンゼルメイクを行います。
出棺までの間、皆が挨拶をするためにお顔を拝見します。
その為お顔の状態というのはとても大事です。
自分がお化粧を失敗した時や無精髭を生やしたままの姿を見られたくないように、ご本人やご家族もやはり綺麗な状態で看取りたい、看取ってほしいと願っています。
そのためにも顔のエンゼルメイクは特に重要と考えてください。

エンゼルメイクをする際は衣服に汚れが使いないようにタオルを胸元に当て髪は固定します。
その後はクレンジンクマッサージやティッシュオフ、乳液で乾燥を防いだうえで女性がメイクをする時と同じ要領でファンデーションやチーク、アイメイク、リップをしていきましょう。
この時に使用する化粧品は血色用のものを使用しできるだけ明るい雰囲気になるよう努めてください。
ご家族の方に生前のメイクを聞いてそれを参考にするのもいいかもしれません。
そして、このエンゼルメイクだけは普段から友人同士で練習することができますので、どのくらいの色がいいのかなど手順を確認していくのもいいと思います。

ストレッチャーで霊安室に移動

ここまでが終わったら退院することができますので、葬儀社のお迎えが来るまでは抱きうつしでストレッチャーに移動し霊安室でお待ち頂きます。
抱きうつしの際もご家族にご協力をお願いしましょう。

退院のお見送り

そして最後。
退院のお見送りです。
このシーンは皆様記憶に深く残ります。
姿勢を正し、厳粛な態度で見送りましょう。